APRESIA Technical Blog

ANO株式会社とAPRESIA、幕張メッセでのオーディオネットワークの安定稼働を共同実証

はじめに

幕張メッセでの大規模イベントにおいて、ANO株式会社様は音響や照明、スタッフ同士のコミュニケーションツールの通信インフラを提供されました。
Danteをはじめ、Bolero、Art-Net、スタッフ用のインターネット接続など、多様な通信をリハーサルからイベント終了までの1週間にわたり、安定して稼働させることに成功しました。
本ブログでは、その中でもオーディオネットワークの安定稼働に向けた、弊社との共同実証内容についてご紹介いたします。

Dante
Dante(Digital Audio Network Through Ethernet)は、オーストラリアのAudinate社によって開発された、音声信号をイーサネット(IPネットワーク)上でやり取りするAoIP(Audio over IP)技術です。
Danteを使用すると、さまざまなオーディオ機器をイーサネット経由で高音質かつ低遅延で接続できます。
音楽イベント、学校や会議室のAV設備、商業施設のBGMシステムで利用されています。

Bolero
Riedel社が開発したワイヤレス・インカム・システムです。
音声データのやり取りには、AoIP(Audio over IP)技術である「AES67」を用いて、イーサネット経由での通信が可能です。
放送、演劇、スポーツイベントなど、さまざまな分野でのコミュニケーションツールとして広く利用されています。

Art-Net
Art-Netは、DMX512信号をイーサネットで送信する、照明機器や舞台装置用の通信プロトコルです。
Art-Netを利用することで、ネットワークケーブルやスイッチを使って、従来よりも長距離かつ多チャンネルの制御が可能になります。

 

ANO株式会社の紹介

ANO株式会社は、映像、音響、システム構築など多岐にわたるサービスを提供する企業です。
エンターテイメント分野やイベント運営での高度な専門知識と豊富な経験を持っています。
< ANO株式会社 – 東京にある小さなあの会社 https://ano-inc.jp/about-us >

APRESIAのPoE対応L2スイッチ「ApresiaNP2500-16MT4X-PoE」について

写真:「ApresiaNP2500-16MT4X-PoE」

「ApresiaNP2500-16MT4X-PoE」はエンタープライズ向けに設計された高性能なPoE対応L2スイッチです。
16ポートのPoE+と10Gアップリンクに対応し、多様なシーンで柔軟に対応できます。
< ApresiaNP2500-16MT4X-PoE | https://www.apresia.jp/products/ent/apresianp2500-16mt4x-poe.html >

共同実証の背景

近年、オーディオネットワークシステムの普及により、Dante対応のネットワーク機器に対する需要が高まっています。
特に大規模なイベントやコンサートホールなどの現場で使用されるネットワーク機器には、高い信頼性と性能が求められています。
音響ネットワークに求められる要件は非常に厳しく、現場では停止が許されないミッションクリティカルな状況であるため、安定性や信頼性が特に重要です。
このような背景を踏まえ、幕張メッセで開催された某イベントにおいて、「ApresiaNP2500-16MT4X-PoE」を使用して、Danteを用いたオーディオネットワークの安定稼働を共同実証しました。

Audinate社が公開している情報を参考に、弊社では最適化した推奨設定を作成し、構築を担当したANO株式会社と情報を共有しました。
また、システム設計はANO株式会社、機器のコンフィグレーション設計は弊社がそれぞれ担当し、緊密に連携することで、今回のプロジェクトの成功に寄与しました。

< 参考:Dante ホームページFAQより | https://www.getdante.com/support/faq/?category=network-basics%2Cnetworking

実際に本番前のリハーサル現場を見学し、具体的にどのようにしてこれらの要件が満たされているのかを確認しました。

Danteの推奨configの解説

設置対象
config モード
設定内容
コマンド
QoS
interface
QoSトラストモードをDSCPに設定
mls qos trust dscp
interface
PTP同期パケットの優先度を「最大」にする
mls qos map dscp-cos 56 to 7 
interface
オーディオパケットの優先度を「大」にする
mls qos map dscp-cos 46 to 5 
interface
予備の優先度を「中」にする
mls qos map dscp-cos 8 to 0
interface
その他の優先度を「最低」にする
mls qos map dscp-cos 0-7,9-45,47-55,57-63 to 1
interface
フロー制御を無効(デフォルトで無効)
flowcontrol off 
interface
EEEを無効(デフォルトで無効)
no eee 
IGMP
スヌーピング
global
IGMPスヌーピング有効化
ip igmp snooping
vlan
IGMPスヌーピング有効化
ip igmp snooping
vlan
IGMPクエリー送信機能有効化
ip igmp snooping querier
vlan
IGMPクエリー送信間隔を30秒に設定
ip igmp snooping query-interval 30
※ デフォルト値のため設定不要項目です。

幕張メッセ 国際展示場における現場構成

国際展示場では、展示ホール 5 からホール 7 を光ファイバーで接続し、Dante や Art-Net を含む各種プロトコルを伝送しました。
・各ホール用 L2 スイッチとして、「 ApresiaNP2500-16MT4X-PoE 」を設置
・各機器は L2 ネットワークを介して、デイジーチェーン構成の光ファイバーケーブル(ケーブル長:約 700 メートル)で接続

リハーサル現場の見学内容

・中継拠点
「 ApresiaNP2500-16MT4X-PoE 」を使用して各種 Dante 対応機器の接続と制御が行われていました。
テクニカルスタッフ用ワイヤレスインカム( RIEDEL 社 Bolero )と連携し、安定したオーディオ信号の伝送が確認されました。
音響技師がコンソールを操作しながら、会場内の音響バランスを調整していました。

・イベントステージ
次に、実際にリハーサルが行われる会場を見学しました。そこでは、大規模な LED ビジョンが設置されており、リアルタイムに映像が流れている光景が広がっていました。
ここでも、Dante 対応機器がフル稼働している様子を確認することができました。
特に、会場内での PA 機器と映像伝送の接続が「 ApresiaNP2500-16MT4X-PoE 」を介して行われていた点が印象的でした。

・監視室
監視室では当社ネットワーク監視ソフトウェア「 AN-ManagerStation 」を使用し、ネットワーク状態をリアルタイムで監視していました。
モニターには、ネットワークトラフィックや各機器のステータスが表示され、担当者が慎重にチェックを行っていました。
< AN-ManagerStation | https://www.apresia.jp/products/soft/an_manager.html >

共同実証構成図

共同実証コンフィグ

今回、共同実証で使用した ApresiaNP2500-16MT4X-PoE のコンフィグレーションを、ANO 株式会社のご協力のもと公開いたします。
このコンフィグレーションは、 Dante 、 Bolero 、 Art-Net に関わる設定を抜粋しています。
なお、Bolero と Art-Net については公式の設定規定が存在しないため、弊社からの推奨設定はありませんが、今回公開する内容は ANO株式会社 が実際に使用されたコンフィグとなります。
実際に運用された事例としてぜひご参考ください。
以下のリンクからダウンロードできますので、ぜひご活用ください!
< 共同実証コンフィグ | ダウンロードはこちら
※ダウンロードできない場合はこちらまでご連絡ください。<ap-marketing@apresiasystems.co.jp>

共同実証の結果

ANO 株式会社と APRESIA による共同実証では、以下のことが明らかになりました。
1. 安定したオーディオ信号伝送:
Dante を使用したオーディオネットワークが安定動作し、高音質かつ低遅延なオーディオ信号伝送が確認されました。
2. 高い信頼性:
「 ApresiaNP2500-16MT4X-PoE 」は、長時間使用においても高い信頼性を示しました。
3. シームレスなネットワーク統合:
Dante に対応したデバイス間の連携がスムーズに行われ、複雑なネットワーク環境でも問題なく安定稼働することを確認しました。

まとめと感想

本ブログでは、ANO 株式会社と APRESIA が共同で行った幕張メッセでの Dante ネットワーク実証についてご紹介しました。
今回使用した「 ApresiaNP2500-16MT4X-PoE 」により、高品質なオーディオネットワークの構築が可能であることを確認しました。
この実証を通じて、オーディオネットワークの安定性と信頼性の重要性を再認識することができました。
オーディオネットワーク環境向けのネットワークスイッチの選定についてのご相談は、お気軽にお問い合わせください。

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